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SS 三角形の行く末 ①秋山澪

2010.10.21 *Thu*
※澪→律←ムギ・唯梓
※三人称
※澪視点

『三角形の行く末 ①秋山澪』

秋山澪は機嫌がよくなかった。
自室のベッドにうつ伏せに転がって、携帯電話を無造作に放り出す。大きな溜め息がその口から零れた。
いやはや、まったくもって、どうしてこんなにも面白くないのだろう。
目線をちらりと、投げ出した携帯電話に向ける。

「律の、ばか」

澪は拗ねた表情を浮かべて、それから枕に顔を埋める。
さっきまで、澪は電話をしていた。相手は、澪の幼馴染で、軽音部の部長である田井中律。
律が無意味に電話をかけてくるのは、澪にとって日常茶飯事のことだ。今さら、そのことによって貴重な受験勉強の時間が削られた、などと不機嫌になったりはしない。
むしろ律からの電話を澪は楽しみにしてさえいたりする。律と話すのは楽しい。とても気分がよくなって、言葉が尽きない。ついつい話し込んでしまう。気がつけば日を跨いでいるなんてこともざらだ。
だから、今さっき律から電話がかかってきた時だって、口では「また電話かけてきて。あいつは勉強しなくていいのか」なんてぐちぐち言いながら、内心は喜んでいたりしたのに。

「……ばか」

しかし、今回は内容が澪にとって面白くないものだった。

『……でさ、街でムギと会ってさ~。ん? どこ行ったかって? え~と、駄菓子屋とか、ゲーセンとか……』

自分の知らないうちに律と、それから同じ軽音部の仲間である、ムギこと琴吹紬が遊んでいた。たったそれだけのこと。それだけのこと、なのに。

『ムギのヤツ、ほんと何にでも興味深々でさぁ。まぁ、いつものことだけどな』

律の口から語られる、今日一日律とムギが過ごした時間。
その話を訊いていると何だか、胸がざわざわして、落ち着かなかった。思わず「何で私も誘ってくれなかったんだよ!」と怒鳴る様なマネをしてしまった。
おかしいのは自分だ、と澪はよくわかっている。
律は澪を誘わなかったわけではない。澪の方から断ったのだ。夏期講習の予習がある、などと言って。本当はそんなものはどうにでもなったのだけれど、あまり遊び過ぎるのも受験生として良くない、なんていう良識的な見解からそんなことを言ってしまった。
律からすればとんだ我儘だ。呆れられているかもしれない、と澪は思う。
それでも澪は、律が誰かと自分の知らない、関与できない時間を過ごすというのが嫌だった。
別に律の全部を知っていると思うほど、澪は傲慢ではないし、弱気な言い方をすれば自信はない。だから、澪の知らない律がいるのは当たり前だし、律が澪の知らない時間を過ごしているのも当たり前だ。
それに、ムギだって澪にとって大事な友人で、大事な仲間だ。幼馴染と友人が仲良く遊びに行ったというだけで、こんな気分になるなんてどうかしている。

(ああ、そうだった)

澪は、ごろんと寝返りを打って、天井を見上げた。

(私はもうとっくに『どうか』してしまってたんだっけ)

携帯電話を手に取る。適当にボタンに触れると、画面に映し出される待ち受け画面。
そこには、澪と律が写っていた。これは、去年の冬、ライブハウスで演奏をした後に撮ったものだ。あれから半年以上経つのに、澪は未だその待ち受けを変えていない。
茹だる様な暑さが続く今からは季節外れの、コートを着た二人。演奏を終えた高揚感の中、二人で撮った記念写真。澪の宝物だ。

「りつ」

澪はその待ち受けを開いたまま、携帯電話をぎゅっと握って胸に寄せる。まるでそこに律がいるかのような、暖かい気持ちになる。
小学生のころからずっと傍にいて。
明るくて、人に分け与えても有り余るほど元気一杯で。
ふざけて澪を困らせたり、泣かせてばかりで。
それでも、さりげなく当然のように澪を助け、守ってくれる。
そんな幼馴染のことが。そんな田井中律のことが。

「すき、だよ」

澪は好きだった。
その想いは、同性に向けるものとしては強過ぎるものであることを澪は自覚していた。
中学時代、同年代の友人達が異性に対して心惹かれ、そして想いが通じ合ったり、届かなかったりしている様子を澪は話の中心から離れた場所から見ていた。
いや、正直に言えば中心に引き込まれそうになったこともあった。告白されたり、想いを綴った手紙を受け取ったり。
しかし澪はそれら全てを断った。
「恋とかそういうの、よくわからないから」なんて言って。何で全部断るのか、と訊いてきた律には「今の私の恋人はベースだからな」なんて冗談めかして。
本当は違う。よくわからない、なんて嘘八百。戯言も良い所だ。
だって、澪はその頃から律に対して強い想いを抱いていたのだから。
友人達が語る、好きな異性に対する想い、心の未知の部分をくすぐられるようだという、どうしようもなく惹かれるという、そういう気持ち。それは律への澪の想いそのものだった。
澪は、そんな自分が怖かった。
同性である律に、親友である彼女にそんな気持ちを抱いてしまう自分を普通じゃないと、異常だと、ずっと思ってきた。
そんなものはひたすらに隠して、ずっと律の一番の友達でいようと、心に決めていた。

その決心が揺らぎ始めたのは、高校に入って二年目の冬。澪の友人と後輩が「私達、付き合うことになりました」なんて言い出したのがきっかけだった。

女子高である。だから当然のようにその友人も後輩も女の子だった。女の子同士で、恋人になるというのだ。
澪は唖然とした。
自分だけがおかしいのだと思っていた。女の子を好きになるのはいけないことだと強く言い聞かせてきた。
だけど、その時の友人の本当に嬉しそうな満面の笑みや、後輩の照れてはにかむような笑顔を見て、澪は思った。

「こんなに幸せそうなのに、それはいけないことなのか?」

自分がどうしても踏み出すことができなかった、踏み出してはいけないと思っていた一歩。ライン。壁。
それを乗り越えて笑いあう二人はとても眩しくて、とても尊いもののように思えて。少なくとも澪には、それを否定することなんてできそうもなかった。
別に女の子を好きになったって、いいのかもしれない。あれ以来、澪はそう考えるようになった。
それに、律もムギも、その二人を祝福していた。それはつまりあの二人も別に女の子同士の恋愛に抵抗があるわけではないということだろう。
ムギの方は以前からそのような片鱗は見せていたのでわかるが、律にも偏見はなさそうだというのが、さらに澪の心を後押しする。
あれから半年以上が経った。
もうそろそろ、動いてもいいのかもしれない。いや、動くべきなのだ。今日のような些細なことでもやもやするぐらいなら。
しかし。

「告白なんて、恥ずかしい……」

澪は恥ずかしがり屋だった。だからこそ、今まで動けずにいたという面もある。もし、澪がもっと活動的であれば状況は変わっていただろう。

「でも、このままじゃ嫌だし」

結局はこの「恥ずかしい」と「何とかしなきゃ」の循環。堂々巡り。自分一人ではこれ以上進めそうもない。
女の子同士で付き合っている友人と後輩の笑顔が頭に浮かんだ。半年経っても相変わらず仲良くやっているあの二人。
話を訊いてみたい。相談してみたい。
自分も、彼女達のように幸せいっぱいの笑顔で律と笑いあいたいから。
息を大きく吸い込んで、それから、ふぅっとはきだす。それから気合いを入れるように「よしっ」と小さく握りこぶしを作る。
明日だ。明日、会って話を訊こう。相談してみよう。
やっぱり恥ずかしいけれど、でも、もうそんなことばっかりも言っていられない。
もう一度、携帯電話を見る。そこには大好きな想い人の写真。その太陽のような笑みはいつだって澪の背中を押してくれる。
うん、何とか頑張ってみよう。
澪は仰向けになって、両腕を天井に向かって突き出した。その胸に強い決意を秘めて。

「さてと、二人のどっちに相談するのがいいんだろうか……」




短けぇ! ちなみに澪と律の電話の内容は例の律ムギデート回のですが、若干原作とアニメをごっちゃにしております。都合のいいようにw

三角形の行く末 ②琴吹紬
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COMMENT

No title
次も期待してますっ。
頑張ってくださいね。
2010/10/23(土) 02:39:40 | URL | 唯梓は至高過ぎ! #- [Edit
No title
おひさしぶりです~
本当に久しぶりに覗いてみたんですが
やっぱあなたが書く小説好きですよ~

楽しみにして待ってます!
2010/10/29(金) 18:51:27 | URL | くろ #- [Edit

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Author:松中 竜馬
百合が大好きなしがない人間。
唯梓は至高。
趣味はスポーツ観戦・麻雀・小説書き。

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ジャンルはけいおん!がメイン 
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