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SS 確かな愛の始まり(1)

2010.06.11 *Fri*
※唯梓
※「淡い恋の終わり」前編から、梓視点へ。
※初デート話、あんまり甘くないです。



『確かな愛の始まり』

私、中野梓は平沢唯先輩とお付き合いすることになった。
一応断わっておくが、私は女の子で、唯先輩も女の子だ。
世間一般から見ればこの恋は歪なのかもしれないけど、異常なのかもしれないけど。
それでも、私達は恋人になったのだ。
決めたんだ。この想いを一生大切にしようって。

想いが通じ合ったあの日、私は家に帰ってからもずっと唯先輩とメールをしていた。
最近学校であったこと。
勉強のこと。
クラスの友達のこと。
軽音部の人達のこと。
憂のこと。
これからのこと。
お互いの好きなところ。
直してほしいところ。
面と向かっては言い辛いことも含めて、いっぱいいっぱいメールした。
そして寝る前、最後のメールで唯先輩は『今週の日曜日、デート行こうよ!』と誘ってくれた。
嬉しくて。幸せで。
もうどうにかなってしまいそう。
それもこれも全部、後押ししてくれた先輩達、そして憂のおかげだ。
先輩達には、次の日の学校で私と唯先輩が事の顛末を説明した。律先輩は「結婚式には呼べよ~」と茶化してきた。澪先輩は「恋人、かぁ」と頬染めながら呟いた。ムギ先輩は「二人とも、よかったわね」と笑ってくれた。
みんな、あたたかく祝福してくれた。
そして、親友の憂も優しく見守ってくれている。
感謝してもしきれない。
絶対、この幸せは離さない。離したくない。

日曜日、デートの日の朝。私は目覚ましをセットした時間より一時間ほど早く目が覚めた。
まるで、遠足が楽しみで早起きしてしまった小学生みたいだと、私は自分に苦笑する。
しかし、実際のところ起きてすぐだというのに頭はすっかり覚醒していた。まぁ、早起きする分には何も問題はない。寝坊だったら困るけど。
……唯先輩、寝坊とかしないだろうか。ちょっと心配だ。
私は携帯電話を手に取って、アドレス帳を開く。そして『唯先輩』を選択。
どうしよう。モーニングコールとか、してみようかな。いや、起こしたところで二度寝してしまう可能性もあるし、そもそも出ないかもしれない。ていうか、デートの日の朝に妙なことをして機嫌を損ねるのも嫌だし……。
そんな風に逡巡していると。

♪~♪~♪~

「わわっ!?」

手に持っていた携帯電話が急にけたたましく鳴り響き始めたので、私は驚いた。
この着信音は電話だ。
……電話? こんな時間に、一体誰から。 
一端、息を吐いてから、落ち着いてディスプレイに表示される文字を見る。
そこには。

calling from 唯先輩の文字が躍っていた。

「あなた、超能力者ですか!?」
『うわ、吃驚した!』

通話ボタンを押すなり、私は叫んでいた。
いや、だって私が電話しようか悩んでいた矢先にかけてくるとか、狙ってるとしか思えないでしょ! どんなタイミングですか!

『おはよー、あずにゃん』
「……おはようございます。こんな朝っぱらからどうしたんですか」

いきなり大声をあげてしまったことに若干の気まずさを覚えつつ、私は訊ねる。
自分だって、『こんな朝っぱらから電話』しようとしていたんだけど、そのことは棚に上げておこう。

『いや~、何か目が覚めちゃって。今日のデートが楽しみでね~。それで、居てもたってもいられなくて電話したんだけど』

その言葉を聞いて、私は一瞬呆気に取られた。
そして私も同じ理由で早起きしたことを思い出して、口元が緩む。
そっか、唯先輩も私と同じだったんだ。自然、軽い笑いが洩れてしまう。

『ああ、ひどいっ。笑うなんてぇ』

電話の向こうで、唯先輩が頬を軽く膨らませている様子が容易に想像できる。
いや、ね。おかしくて笑ったんじゃないんですよ。まぁ、ある意味おかしかったからだけど。
唯先輩と私、全く同じように今日のデートを楽しみにして、同じように早く起きて、同じように相手に電話しようとして。

すごく嬉しい。好きな人と同じ気持ちだってことは、こんなにも幸せなことなんだ。

「早起きなのはいいことですけど、今から二度寝だなんてのは止めてくださいよ?」
『大丈夫だよ! ……多分』
「多分、が余計です。やっぱり家まで迎えに行きましょうか?」
『いやいや、やっぱりデートらしく待ち合わせしようよ』
「変なところで頑固ですね」
『えへん』
「別に褒めたつもりじゃないんですけど」

他愛もないお喋りをしたり、今日行こうと思っているところを確認したり。
何気ない会話が、愛おしい。

「そろそろ切りますね。遅れないで下さいよ」
『うん。頑張るよ!』
「それぐらい頑張らなくてもできるようになってください。それじゃあ」
『あ、ちょっと、待って』
「はい?」
『愛してるよ、あずにゃん!』
「っ!」

突然の愛の言葉に、私の体温が急激に上昇する。かぁっと頬が染まるのを感じた。
相変わらず唐突な人だ。私はいつもその予測不能な言動に振り回されてばかり。

「い、いきなりですね……」
『あずにゃんはー?』
「うぅ、言わなくてもわかってるでしょっ」
『……そっか。えへへ。じゃあ、また後でね!』
「はい、また後で」

全く、唯先輩は人を恥ずかしがらせるのが好きなんだから。しょうがない人だ。
心の中でそう呟いてみたけど、なんだかんだで微笑んでいる自分は相当唯先輩のことが好きなんだな、と思った。

さぁ、支度を始めようか。

  ◇

抜けるような蒼の空。雨の日が続いていたので、久しぶりのいいお天気だ。ただ少し風が吹くと肌寒さを感じる。思わず両腕で自らを掻き抱いてしまうほどには、寒い日だった。冬が目前に迫っている。
待ち合わせ場所の、商店街の入り口に私は立ち尽くしていた。
現在、九時五十分。
十時にここって言ったんだけど、さて、唯先輩はちゃんと時間通りに来るかな。
朝、電話したんだから大丈夫だとは思うけど。
手持ちぶさたになったので、鞄から小さな手鏡を取り出して身だしなみのチェックをする。今日はいつもより気合いを入れて髪を整え、服を選んできた。
やっぱり、初めてのデートだから。好きな人とのお出かけだから。
だから、らしくもなくちょっと張り切ってしまった。
唯先輩は可愛いって言ってくれるだろうか。もし、何も言われなかったら凹むなぁ……。あんまりお気に召さなかったらどうしよう。

「って、それはネガティブ過ぎるかな」

私は、そんな思いを振りはらうように小さくかぶりを振った。
自信持っていこう。今日の私は可愛いのよ! なんて。

気持ちを落ち着かせるために、なんとなしに辺りを見渡してみる。

日曜日の街中は、雑多としている。その中に身を置いていると、自分の存在が曖昧になってしまうような錯覚を覚えるのは私だけだろうか。
背の高い金髪の人。真面目そうな大学生風の人。仲良さ気な高校生くらいのグループ。幸せそうなカップル。
溢れている。
人が、人達が。そしてその分だけの想いが。
その量は膨大で、私みたいなちっぽけな人間は押しつぶされてしまいそうになる。覆い隠されてしまいそうになる。
だから、唯先輩。
その前に、見つけてください。連れ出してください。
あなたの傍でなら、きっと私は私でいられるから。
……そんなのは、我がままなんだけどね。私を私たらしめるのは、どう足掻いたところでやっぱり私自身でしかない。
私が私でいたいというのなら、私が私の想いを守り続けなきゃいけない。
私から、唯先輩を見つけて、連れ出さないといけない。
そう決めたんだから。
でも、それでも思ってしまうんだ。私を探し出してほしい。一緒に居てほしい。時には目いっぱい甘えさせてほしい。
本当に、我がまま。
だけど、ね。

「あずにゃんっ!」

あの人は、私のそんな我がままを叶えてくれる。どれだけ人がいても、そして私がその中に埋もれていようとも、きっと見つけ出してくれる。連れ出してくれる。
そういう人だってことは今までで十分わかっている。
私は声がした方向へと視線を向けて、その声の主、そして私の待ち人である唯先輩の姿を捉えた。季節感のない、春らしい薄桃を基調とした色合いの可愛らしい服装が唯先輩らしいな、と思う。
私が手を振り返すと、人ごみだというのに唯先輩は急に走り出した。いつものだらけた唯先輩からは想像もできないほど軽やかなステップで人をかわして、それから。

「あっずにゃ~ん♪」
「うにゃっ!?」

その勢いのまま私に飛びついてきた。
……そう、こういう人だってことも、今までで十分に、いや十二分にわかっている。気持ちの表現が過剰なんだよね。
嬉しい反面、さすがにこれだけ人が多い場で公然と抱きしめられ、しかも頬摺りまでされるという羞恥に耐えれるほど私の精神は頑丈、もとい鈍感にはできていない。

「ちょっと唯先輩っ! こんなところで止めてください」
「え~、朝から抱きつきたくて仕方がなかったのにぃ」
「そんなこと言われても、知りません」
「それに今日寒いでしょ?」
「え? あ、まぁ少し肌寒いですね」
「だから、あずにゃんカイロなの♪」

さらにぎゅっと強く抱きしめられる。通りすがる人達のちらちらとした視線を感じる。
うう、顔から火がでそう……。

「お、また一段とぬくくなりましたな」
「誰のせいですか、誰の!」

まぁ、実際のところ羞恥による体温上昇と唯先輩の温かさでさっきまでの肌寒さも気にならなくはなったけど。
いや、それとこれとは話が別だ。
とにかく、今は一刻も早く退いてもらわなくては。

「もう、とにかく早く離れて下さい!」

私は、強めの力で唯先輩を引きはがす。

「全く、いつもいつも――」
「……やっぱり、あずにゃんは人前で抱きつかれるのは嫌?」
「え?」

少しお説教をしてやろうと思って開いた口は、目の前の悲しそうな顔を見て、そのまま固まる。
ううん、悲しそう、というのはちょっと違う。
悲しそうなんだけど、その瞳の奥には激情が見え隠れしている。憤り、とでも言えばいいのだろうか。今までの唯先輩の中には見い出したことのない類の色が、そこにはあった。
いきなりのことに、私は戸惑う。
いつも通りだったはずだ。唯先輩が私に抱きついてくるのも、私が抵抗するのも、いつも通り。その癖私は嫌がっていないということだって、唯先輩は知ってるはずだ。
じゃあ、唯先輩の中に蠢いて見える感情は、何? わからない。全然わからない。

「ごめんね。やっぱ嫌だよね。あずにゃん、恥ずかしがり屋さんだから」
「ふ、普通は恥ずかしいですって」
「そりゃそうか。じゃあ、そろそろ行こうよ。最初は楽器店だったよね?」

らしくもなく、若干の早口でそう言うと唯先輩は踵を返す。

「あ……」

次の瞬間、私は自然とその腕を掴んでいた。

「……あずにゃん?」

唯先輩は、驚いた表情で私の顔を見る。でも私だって、自分の行動に驚いていた。
ただ、何か、何か言わなきゃって。唯先輩のこと、わからないままは嫌だって。わかりたいって。
そう思っていたら、気がつくとそんなことをしていた。
しかし、何て言ったらいいんだろう。どんな言葉をかけるのが正解なんだろう。
やっぱり、わからない。

腕を掴んだまま、押し黙ってしまった私に唯先輩は柔らかな笑みを向けてくれた。そこにはさっきの感情は見て取れない。

「手、繋ごっか」
「え?」
「それも、嫌?」
「……嫌じゃ、ないです」

そう、嫌なわけない。出来ることなら、ずっとずっと繋がっていたい。ずっとずっと触れていたい。
嫌なわけ、ないじゃないか。
好き、いや、大好きなんだから。
するりと、唯先輩の指が私の指に絡みつく。私もそれをぎゅっと握り返す。唯先輩の温かさが伝わってくる。指先から、血に伝わって、体中を巡っていく。心臓が熱くなる。
私が隣に立つと、唯先輩はすっと私の耳元に唇を寄せて囁いた。

「今日の梓ちゃん、とっても可愛いよ」

やっぱり唐突でストレートな、そして私が欲していたその言葉に、熱くなった心臓が跳ねあがった。
ああ、もう、熱いな。
今日は十一月にしてはとても熱い日だ。




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松中 竜馬

Author:松中 竜馬
百合が大好きなしがない人間。
唯梓は至高。
趣味はスポーツ観戦・麻雀・小説書き。

ブログの内容は二次創作百合小説が中心となります。
なので、こう言うのも何ですが、そういうのが苦手な方は見ないことをおすすめします。

ジャンルはけいおん!がメイン 
カップリングは唯梓

感想、ネタ振り、唯梓への想い等、コメントを頂けると非常に嬉しいです。百合好きな方、唯梓好きな方は色々と語り合いましょう!

当ブログは、リンクフリーとさせていただきます。
コメント、拍手等でご報告いただければ、相互リンクさせていただきたいと思います。



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