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SS 淡い恋の終わり 前編

2010.05.31 *Mon*
※純→梓、唯梓
※『どうしようもなく好きなのに』の続編です。
※純視点



『淡い恋の終わり』 前編

私、鈴木純は雨が嫌いだ。
天気予報が「明日は雨です」と告げるだけで、気分は一気にブルーになる。寝る前には、溜め息さえ零れる。
そして、朝起きて鏡を見た時、私はもう一度大きな溜め息を吐くことになっちゃう。
理由は髪の毛。
かなり癖のある髪質をしている私。ただでさえ毎日整えるのに苦労しているというのに、雨で湿気が多い日にはもうお手上げだ。
大爆発。そんな言葉がぴったりな惨状になっている。
それでも頑張って、何とか変にならないように整えてはいるのだけど……。
髪のことを考えると、私の心に一人の少女の姿が浮かび上がる。
触っているととても気持ちいい、真っ黒で真っすぐで綺麗な髪の女の子。クラスメイトで親友、中野梓のことだ。
本人はその髪を「よく日本人形みたいって言われて嫌だ」と言っていたけど、私としては羨ましい限り。
あの子はもっと自分に自信を持てばいいのに。
梓は、ギターがすごく上手い。
梓は、何事にも一所懸命、努力家だ。
梓は、なんだかんだいって優しい。
梓は、とても可愛い。

私はそんな梓に、惹かれている。

いつから、なんてのはわからないけど、気がつけばあの小柄な女の子のことを目で追っていて、見つめていて。
あの子の特別になりたいと、親友という関係よりももっと深い関係になりたいと思うようになっていて。
こんなの、おかしいとは思う。
だけど、もう想いは止まってくれそうにない。
最近は、梓と話すだけで鼓動が速くなる。そろそろ、隠すことも難しくなりそう。
だから、決めたの。
あの子に、梓にこの想いを打ち明けよう。告白、してみよう。
当たり前だけど、すごく怖い。
普通に考えれば受け入れてもらえるわけもない。私は女の子で、梓も女の子なんだから。気持ち悪いと思われて、私は梓だけじゃなくもう一人の親友、平沢憂からも軽蔑されてしまうかもしれない。
だけど、私にはある程度打算的な考えがあるんだ。
まず、梓も憂も優しい。二人とも決して、人の陰口や悪口を言ったりしない。だから、例え私が梓のことを好きだと言ったとしても受け入れこそされなくても、だからといってそれを悪く言って周囲に広めるなんてことはしないはず。
それから、軽音部のこと。今の三年生の先輩が引退してしまえば軽音部には梓しかいなくなる。新入生も今年の感じを見ているとそんなには入らないだろう。私は、梓にはいざとなったら軽音部に入ってあげると言ってある。それを考えれば梓は私との付き合いを断てば、そのメリットを失うことになる。
それに、もしかしたら告白を受けてくれるかもしれない。女子高ということもあって、『その手』の話も皆無ではないし(例えば、澪先輩のファンクラブ会員には『ガチ』の子もいるらしい)女の子同士の恋愛について梓の抵抗も薄いかも。
我ながら汚い考えだとは思うけど、でもやっぱりそれぐらいの後ろ盾がなければこんな気持ちを告白することなんてできやしないよ。
ただまぁ、焦ることはないでしょ。
時間ならまだたっぷりある。少なくとも、高校在学中に梓が男の人と付き合うなんてことはないだろうし、それに私みたいな人間がそうそういるとも思えない。
じっくり、好機を窺うとしましょうか。

そんな悠長な考えでいたのが、全ての間違いだったんだ。

  ◇

朝、登校の時間。
強めの雨が薄緑色の傘をぱたぱたと叩く。足元が濡れる。十一月の雨はひどく冷たくて、体の芯から凍えそうだった。
この雨は昨日から続いている。天気予報によれば、週の終わりにかけて天気は回復していくが、また来週からは雨とのことだ。
梅雨じゃあるまいし、そんなに雨さんも頑張らなくてもいいのに。
そうそう、昨日といえば、梓と憂の様子がおかしかったんだ。
どこかよそよそしいというか、ぎこちない空気が二人の間には漂っていた。それはきっとクラスメイトにはわからないような、そんな微妙なものだけど、でも私にはわかる。
だてに二人の親友やってませんよ。
お昼休みには私を放って、先輩達のところに行ってしまったし。
何かあったんだろうか。う~ん、喧嘩してるって感じでもなかったんだけどな。そもそもあの二人が喧嘩するなんて想像もできない。
でも、違和感は確かに感じたんだ。
よし、もし今日も様子が変なら思い切って問いただしてみよう。あのままじゃ私も嫌だし。

そんなことを思いながら登校したのだけど、私の心配は杞憂と終わった。

学校に着いて私が見たものは、仲良く談笑する二人の姿。昨日のようなぎこちない雰囲気もなく、いつも通りの様子だ。
むしろ、梓にしては珍しくよく笑っている、そんな印象まで受けた。

「おはよう、二人とも」
「おはよ、純」
「おはよう、純ちゃん」

私は鞄を自分の席に置いてから、二人にあいさつをする。梓も憂も笑顔で返してくれた。何だかご機嫌だ。
あれぇ、昨日一日は何だったの? 昨日と落差のある二人の様子に私はただ首を捻ることしかできなかった。

「今日も結構降ってるね~」
「そうだね。純は雨の日嫌いなんだっけ?」
「大っ嫌い。もう一生雨なんて降らなかったらいいのにって何度思ったことか」
「あはは、純ちゃん、それはさすがに困ると思うよ?」
「まぁ確かに雨は嫌なこともあるけど。でも静かな部屋で雨の音に耳を傾けながら本を読むのとかは、私好きだな」
「あ、それはわかるかも~」
「え、私わかんない」
「純には情緒を感じる心が足りないんだね」
「失敬なっ」

まぁ、もう解決したのかもしれない。それならそれでいいよね。何にせよ、二人が笑っていてくれるのに越したことはない。

「そういえば、お姉ちゃんも最近雨好きだって言ってたよ」
「えっ、唯先輩が? だってあの人、ギー太が濡れちゃうから雨嫌いなんじゃないの」

憂の言葉に、梓が食いつくように反応した。
梓は唯先輩の話になると、目の輝きが変わる。声のトーンが上がる。表情が豊かになる。多分本人は自覚していないんだろうけど。
むぅ、おもしろくない。梓に惚れている私から見れば、それは実におもしろくない。

「う~ん、でもこの前、雨で体育の長距離走が中止になったことがあって、そのとき大喜びで『雨大好きー!』って」
「ああ、なるほど……。ふふ、怠け者の唯先輩らしいね」

先輩に対して怠け者だなんて、私はとてもじゃないけど言えない。しかも、相手はその妹だ。
それだけ、梓と唯先輩は仲がいいってことなんだろうけど。
いいなぁ、羨ましいなぁ。やっぱり私も軽音部に入ればよかったかも。そうすれば、もっと多くの時間を梓と過ごせたのに。

「ああ、そういえば唯先輩、結構前のことなんだけど――」
「へぇ、そんなことが――」

目の前では、梓が楽しそうに唯先輩の話をしている。
梓は唯先輩のことをどう思ってるんだろう。
ところ構わず抱きついてきて恥ずかしいとか、練習を真面目にやってくれないとかいう愚痴はよく聞くけど、決してそれを本当にどうにかしたいと思っているわけではなさそう。最近はそんな梓の愚痴も含めて、それは一種、軽音部の様式美と化しているんじゃないかとさえ思う。
そして、愚痴を言う梓の顔は、どこか楽しげなのだ。唯先輩のことを話せるのが嬉しくてしょうがない、という感じだ。
だから、好きなのは間違いないよね。

じゃあさ、梓は唯先輩のこと、どれぐらい好き?

澪先輩と比べて、どっちが好き?
律先輩と比べて、どっちが好き?
紬先輩と比べて、どっちが好き?
真鍋先輩と比べて、どっちが好き?
憂と比べて、どっちが好き?

ねぇ、梓。

私と比べて、どっちが好き?

心の中で問いかけてみる。問いかけて、でも答えは返ってこない。答えを持つはずの人物は、私の目の前で笑顔で言葉を紡いでいる。
その姿が幸せそうで、なぜか胸に痛かった。
だから、私は話題を逸らすために、梓の気を引くために、

「ねぇねぇ、今週の日曜日、どこか遊びに行かない? せっかく晴れるみたいだし」

そんなことを言ってみたのだけど。

「え、あ~、ごめん。日曜は私ちょっと出かける用事があって……」

あっさりとフラれてしまった。ちょっと、いや結構、かなりショックだ……。

「そ、そうなんだ。えっと、用事って何?」

動揺から、止せばいいのに私はそんなことを訊いてしまった。でも気になるじゃない。好きな人が休日にどこに出かけるのかって。
もしかしてデートだったり……。
あはは、まさか、ね。いや、まぁどうせ大した用事じゃないんでしょ。うんうん、だって梓だもの。間違っても誰かとデートだなんてそんな―― 

梓は私の質問を聞いて、固まった。

それから「あ、え、えと」と慌てふためくような仕草を見せる。頬に若干の赤みが差している。
え? 何? 何なの、その反応。
『今週のお休み、愛しのあの人と初めてのお出かけ♪ でも大変、友達にばれちゃいそう。まだ内緒にしておきたいのに~!』みたいな。
はっはっは。もう、冗談きっついなぁ、梓。
そんなそんな。梓に恋人だなんて。そんなわけないじゃないか。
……そんなわけ、ないよね?

「あ、梓?」
「え、あの、あのね」
「どうしたの、梓ちゃん。軽音部の先輩とお買いものに行くんでしょ?」
「えっ……、あ、そう!それ!」

なぜか代わりに憂が答えて、梓がそれに便乗し出した。
何だろう。すごい、嘘っぽい。
まさか本当にデートだったりするの!? これはどうにか聞き出さないと!

「ねぇ、あず――」

ちょうど、私が口を開いたそのとき。
ステレオタイプなチャイムの音が辺りに響き渡った。朝のHRの時間だ。

「あ、ほら、もう席着かなきゃ。じゃあまた後で」

そう一言言って梓は席へと戻っていった。ううむ、聞きそびれた……。
いいや、また次の休み時間に訊けばいい。
そう思っていたんだけど――

「ねえ、梓、さっきのことなんだけど」
「あ、憂。さっきの数学でわからないことがあったんだけど」

「ねえ、梓、さっきのこと」
「あ、ちょっとお手洗いに」

「ねえ、梓」
「今日も純は可愛いね(にこり)」

わぁい、可愛いって言われた~! えへへ~。

って、違うっ!
梓は私が話しかけてもことごとくはぐらかしてくる。くそう、どうしても言う気はないようだ。
……いいだろう、そっちがその気なら受けて立ってやる。
私は脳内で作戦を練る。梓が隠している秘密を暴くための作戦を。
恋する乙女の本気、見せてやろうじゃないか!

  ◇

作戦、だなんて大仰なことを言ってはみたものの、結局私のとった行動は単純明快だった。
翌、日曜日。現在時刻、午前八時。
所、中野宅すぐ前の電柱の影。
滅多にかぶらないニット帽と、それから伊達眼鏡を装備。
気分はさながら浮気調査の探偵さん。

そう、私は今日一日、梓の行動を『尾行』するのだ。

八時ならばまださすがに家を出ていないだろう、と踏んでこんな朝早くから待機しているというわけだ。
単純明快ではあるけれど、我ながら頭の悪さを感じないでもないアイデアだ。朝の散歩中の人達からの奇異の視線をひしひしと感じる。
だけど、この際形振り構ってなどいられない。
梓に恋人ができたかもしれない。
私がここ数日、どんな思いをしていたと思っているんだ。どれだけもんもんとした時間を過ごしたと思っているんだ。
今日こそ真実を明らかにしてみせる。
そう意気込むと、私はかけ慣れていないためずれてくる眼鏡を直しながら梓の家の様子を窺い続けた。

張り込み始めて、一時間と少しが過ぎたころ。
ついに、ターゲット、中野梓が家から出てきた。

「あれ、梓、あんなおしゃれなカーディガンとか持ってたっけ……」

あまり見慣れない梓の格好。それが、私の心の不安を増大させる。もしかして、誰かとデートという私の勘はあたっているの?
しかし、もたもたしてはいられない。
私は、しっかりと梓の背中を視線で捉えるとある程度の距離を保ちながら尾行を開始した。

少し歩いて最寄のバス停へ。ちょうどのタイミングでバスが来たので、梓はそれに乗り込む。後に続いて、私も気づかれないように乗り込みその後をつける。
これは町の中心地へ向かうバスだ。
揺られること十数分。
目的地であろう、終点へとバスは到着した。

それからまたちょっと歩いて、商店街の入り口付近まで来ると梓は立ち止った。
どうやらここが待ち合わせ場所のようだ。
私はそこから道路を挟んだ向かい側のCDショップに入って、客のふりをしつつその様子を見ることにした。
梓は何だかそわそわしている。しきりに時計を気にしつつ、時々鏡を取り出して身だしなみのチェック。
それくらい普段もやるといえばやるのだろうけど、私の中にある疑惑のせいで、梓が今からデートなんです、という少女にしか見えなかった。
私の中に諦念の気持ちが沸き上がってくる。そして、同時に興味も頭をもたげてきた。
一体、どんな人なんだろう。あのどちらかといえば人見知りをするタイプの、もっと言えば懐かない猫みたいな梓と付き合うほど仲がいい男の人なんていたのだろうか。
それぐらい仲が良いなら会話に登場してもおかしくなさそうなものだけど。しかし、そんなの聞いたこともない。
まぁ、見ていればわかる、か。
そう思って観察を続けていると、梓が手を振り出した。ついに待ち人来たり、のようだ。
私は急いでその梓の視線を追う。
あの背の高い金髪の人? それとも、あっちの真面目そうな大学生風の人? まさか、あのおっちゃんじゃないよね?
と、必死になって梓が待っていたであろう人を探して――

すごい勢いで梓に突っ込んでいく人物を、私は確かに見た。

唖然と私はその光景を見つめる。これだけ人が多い場で公然と梓を抱きしめ、あろうことか頬摺りまでしている人物。
そんな人、そんなことができる人を私は一人しか知らない。

「ほんと、どこでもおかまいなしなんだ……」

そう、その人物とは。
桜が丘高校三年生。
軽音部メインギター。
いつもにこにこ笑顔を振りまく、明るくかわいい人。
普段はだらけていて、どこか抜けている天然さん。
だけど、ここぞという時はしっかり決める。
本人の知らないところで、澪先輩ほどではないにしろ後輩から人気も高い、年下キラー。

そして、梓がいつも楽しそうに語っている、彼女の部活の先輩。

平沢唯先輩だった。




確かな愛の始まり

純ちゃんは実はあずにゃんのことが好きだと思うよっ!ってことで書き始めたこのSS。
まぁ、ゆいあずが確定している以上悲恋失恋にしかならないのですが……。
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松中 竜馬

Author:松中 竜馬
百合が大好きなしがない人間。
唯梓は至高。
趣味はスポーツ観戦・麻雀・小説書き。

ブログの内容は二次創作百合小説が中心となります。
なので、こう言うのも何ですが、そういうのが苦手な方は見ないことをおすすめします。

ジャンルはけいおん!がメイン 
カップリングは唯梓

感想、ネタ振り、唯梓への想い等、コメントを頂けると非常に嬉しいです。百合好きな方、唯梓好きな方は色々と語り合いましょう!

当ブログは、リンクフリーとさせていただきます。
コメント、拍手等でご報告いただければ、相互リンクさせていただきたいと思います。



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