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SS どうしようもなく好きなのに 後編(2)

2010.05.21 *Fri*
私は今、唯先輩の部屋の戸の前立っている。放課後、私は憂に言われた通り、平沢家までお見舞いにやってきた。
ただ、ここには私と憂しかいない。
先輩たちは来ていないのだ。

――五時間目と六時間目の間の休み時間のことだ。

「え、中止、ですか?」
『ああ、悪い。私も澪もムギも今日はちょっと用事があるんだ。唯も休みだし』

律先輩から、電話がかかってきた。何やら、先輩たちには用事があるから今日の練習は中止だということだ。
正直、嘘臭い。誰か一人、ではなく、みんなが、だなんてそんなことあり得るだろうか。

「それじゃあ、唯先輩へのお見舞いも無理ですか?」
『そうだな……。まぁ、ぞろぞろ行っても唯にも憂ちゃんにも負担をかけるだけだろ。というわけで、梓、お見舞いは頼んだ!』
「はぁ、まぁ別に構いませんけど」

一体、先輩たちが何を思って練習を中止にして、私一人を唯先輩の元に向かわせようとしているのかはわからない。

『じゃあ、唯によろしくな』

ただ、電話を切る間際に律先輩が言った一言が。

『……頑張れ。きっと大丈夫だから』

普段あっけらかんとしているあの人からは想像もできないほど、真面目な、真剣なものだったから私は何も言えなかったのだ。

(頑張れって、大丈夫って、どういうことなんだろう)

お見舞いに行こうという人間にかける言葉としては、あまりにも不自然だ。
来るまでの道中、疑問が頭の中を行ったり来たりしたものの、堂々巡りで結局答えは出ず終いだった。

「お姉ちゃん、ただいま」

憂が扉に向かって声をかける。すると、中からは「おかえり」と返事が返ってきた。
声を聞く感じ、別に鼻声だとか、掠れているだとかはないみたいだけど。本当に体調が悪いのか、疑わしいくらいだ。

「あ、あのね、お姉ちゃん。その……梓ちゃんがお見舞いに来てくれたよ」

なぜか、どこか言いにくそうに憂は私の来訪を告げる。「へっ!?」っという素っ頓狂な声が部屋の中であがった。
何でそんなに意外そうなんですか。

「唯先輩。梓です。入りますよ」

私は断わってから、部屋の中に入ろうとドアノブに手をかけた。

「駄目っっっ!!」
「へ?」

突然、悲鳴に近い叫びが私の鼓膜に突き刺さった。

「ゆ、唯先輩?」

いきなりのことに、私は戸惑いを隠すことができない。

「あ、あの、どうしたんですか? 唯先輩?」

それ以上、呼びかけても何も反応は返ってこない。ドアに鍵は掛かっていないみたいだけど、鍵以上の何かが、ドアが開かれることを拒んでいるようで入るに入れない。
い、一体どうしちゃったの?
えっと、寝起きを見られるのが嫌、だとか。部屋がすごい散らかっていて、人を入れたくない、だとか。
……そんなわけないよね。あの、羞恥心ゼロの唯先輩に限って。
でも、じゃあ、じゃあなんで――

「お姉ちゃん、梓ちゃん入れるからね」

当惑している私の、その隣。
憂が、見たこともないほど強張った表情で、そして、聞いたことがないほど強い口調でそう言い切った。
あっさりと何の躊躇もなしにドアノブを回して、扉を開く。そのまま、私は背中を押されて部屋へと入れられた。

「え? え?」
「ごめんね、梓ちゃん。でも、お姉ちゃんが元気になるためには、どうしても梓ちゃんの力が必要だから」
「それって、どういう――」
「頑張れ、梓ちゃん」

ドアを閉めながら、憂は最後に『頑張れ』と言った。律先輩に言われたのと、同じ言葉。
何なの? 私に、何を頑張らせたいの?
私は、はぁっと息を吐くと唯先輩の部屋を見回した。とはいっても、昨日と特に変わったところもない。机の上が綺麗に片付いているぐらいだ。

「唯先輩、どうしたんですか?」

私は、ベッドの上のぽっこりと膨らんでいる蒲団に向かって声をかける。何、トンちゃんのマネみたいなことやってるんだろうか。
唯先輩は何も反応しない。

「風邪ですか? 熱とかあります?」

もう一度、声をかける。
やっぱり、何も反応はない。さすがに、ここまで無視されると私もむっとくる。私はせめて蒲団から出てもらおうと、ベッドに近づいて行く。

「もう、せっかく後輩がこうやってお見舞いに来たんですから、顔ぐらい見せてくれたって――」

そして、私が蒲団に手をかけた、その瞬間。

「来ないでっ!」

急に唯先輩が声を張り上げた。私は吃驚して、そのまま硬直してしまう。

……コナイデ?

私は言われた言葉の意味をゆっくりと咀嚼する。
いつも、私に寄り添ってくる唯先輩。
いつも、私に抱きついてくる唯先輩。
いつも、私に甘えているようで、私を甘えさせてくれる唯先輩。

そんな唯先輩が今、明らかに、明確に、私を拒絶をしたのだと理解するのにはそれなりの時間を要した。

「ほ、ほんと、どうしちゃったんですか……」

ほら、元気出して下さいよ。
いつもみたいに、「あずにゃ~ん」って抱きついてきて下さいよ。
今だったら大サービスってことで怒りませんから、許してあげますから、嫌がりませんから、だから、お願いだから、そんなこと言わないで。

今までに経験したことのない唯先輩の反応に、私はただ動揺するだけだった。
何が起こっているというのか。唯先輩はどうして、こんな。
嫌な予感が体を駆け巡って――

「女の子同士で、おかしいよ」
「っ!」

それは、あっさりと的中した。

がつん、と鈍器で殴られたかのような衝撃が脳内を走る。
頭の中が真っ白になって、目の前が真っ暗になる。
私はよろりと後ろによろめいて、そのまま、ペタリと床にへたり込む。

――そうか、そういうことなのか。

目の前の唯先輩の様子、今日の憂や律先輩の様子が一つに繋がる。
私を拒絶する唯先輩。どこかよそよそしい、私に対してはっきりと物を言ってくれなかった憂と律先輩。
全部、こう考えれば納得がいく。

どうやら、私の唯先輩への異常な想いがバレてしまったらしい。知られてしまったらしい。

呆然としている私に、唯先輩は容赦ない追い討ちをかけてくる。

「こんなの気持ち悪いもん」

気持ち、悪い。
言われた。唯先輩に、言われた。

何で、どうしてバレた?

頭の中でリフレインする疑問。
昨日、唯先輩がネコミミをつけていたとき変な目で見ていたから?
キスされたとき泣き出して、飛び出すなんておかしなことをしたから?
答えは出ない。
ただ、唯先輩に知られてはいけないことを知られて、そして拒まれたという事は、確からしかった。

イヤだ。

そんなの、信じたくない。そんなの、認めたくない。

イヤです、イヤ。

置いて行かないで下さい。拒絶しないで下さい。隣に居させて下さい。受け入れて下さい。

ねぇ。唯先輩。

ワタシノモノニナッテ。

壊れた機械のように想いの言葉を繰り返す。決壊したダムのように想いの言葉が溢れる。
今まで隠し続けていた、私の中に溜まり続けていた、愛憎入り混じった想いが一気に湧きあがって。
それらはあっという間に私という小さな器をいっぱいにして。

気がつけば、私は蒲団を剥ぎ取って、唯先輩に覆いかぶさっていた。

真下には、何が起こったか把握していない唯先輩の呆けた顔がある。
髪はぼさぼさで、目元には薄くクマが出来ている。
そんな唯先輩も、可愛い。
唇の端が吊り上るのを抑えられない。
あぁ、今の私は唯先輩を好きにすることができる体勢なのだ。
例えば、その体の至るところに触ることができる。
例えば、その白磁の皮膚に傷をつけることができる。
例えば、その細い首を絞めてしまうこともできる。
全能で、万能な、支配感。
私はこれ以上なく異常に興奮していた。

「あず、にゃん?」

唯先輩が、状況を飲み込み始めたようだ。その澄んだ瞳に感情が蠢き始めたのがわかる。

うん、ヤルベキコトは、手早く済ましてしまおう。

とりあえず。

私は、唯先輩の唇に私の唇を押し付けた。

「んぐっ!?」

唯先輩はくぐもった声を上げる。一瞬体が強張って、それから私を押しのけようと抵抗する。
私は全身の体重を乗せて、唯先輩の体を押さえつける。いくら私が小柄だとはいえ、唯先輩程度の力では容易に動かせない。
急に呼吸器官を塞がれた唯先輩は、空気を求めて口を開こうとする。
私はそれを見逃さない。一気に、唯先輩の口内へと舌を侵入させる。

「んっ!? ……――ん、んあぁ」

まともに呼吸出来ず、唯先輩は苦しそうに呻いた。
そんな唯先輩を見て、私の中の熱がどんどん加熱する。燃えている。それはさながら全てを焼き尽くす業火。
舌で、唯先輩の舌に触れる。ああ、これが夢にまで見た唯先輩とのディープキス。全部可愛い唯先輩だけど、想像通り、舌も可愛らしい。
私は、その可愛らしい、柔らかい舌を絡め取る。舐める。吸う。頭の中のどこか冷静な部分で、舌、噛まれるんじゃないかな、なんて思ったけど、心配は杞憂だったようで特に抵抗もない。
萎縮したのかもしれない。
それならそれで、好都合だけど。

「んぅっ……、ぁふっ、あず、んんんっ!」

呼吸の暇なんかないし、与えもしない。
頭の中が痺れてくるような感覚。もっと、もっと、味わいたい。
気持ちいい。下腹部がじぃんと熱くなる。もっと、もっと、感じたい。
唯先輩の口の中を隅から隅まで舐めまわす。もっと、もっと、知りたい。

「――……ふっ、あふ、んぅ……んく」

私の唾液と唯先輩の唾液が交じる。必然的に、下側の唯先輩の元へと流れていく。口内に溜まったそれを唯先輩は嚥下した。
すごく、エッチだ。
私の手は自然と唯先輩のTシャツの裾から、中へと潜り込む。
直にその皮膚に触れると、唯先輩の体がびくんと跳ねた。そのまま脇腹、お腹、下腹部を撫ぜる。唯先輩は身をよじる。だけど、逃がさない。
さらに体重を乗せて、強く押さえつける。

私は、そのまま唯先輩のズボンの中に手を突っ込んだ。

全部、奪ってしまうつもりだった。
無理矢理に、強引に。気持ちを私に向けることが無理だというのなら、今この瞬間、この体がワタシノモノになればいい。

そう思っていたのに。

さすがに限界が来て、一端、息を吸うために唇を話す。銀の橋がかかって、ぷつりと切れた。
唯先輩と目が合った。
そのくりっとして可愛らしく、綺麗な瞳いっぱいに涙を浮かべて、私を見てくる。見つめてくる。

「わからないよ……」

その濡れた唇から、ぽつりと言葉が零れる。
同時に、涙も瞳から零れ落ちる。それは、一本の筋を引く。
その顔には私に対する恐怖だとか、糾弾だとかは一切見て取ることができない。

ただひたすらに、悲しみと戸惑いを湛えた表情だった。

……ズルい。
そんな顔をするのは、ズルい。

私の中の支配感が、興奮が、熱が小さくなって、引いていくのを感じる。
もう、これ以上唯先輩をどうにかなんて、できそうになかった。

「……教えてよ、あずにゃんの気持ち。私のことどう思ってるの? 嫌いにならないの? どうして、こんなことしたの?」

自分のことをどう思っているか、だって。
何を、今さら。
否定したくせに。拒絶したくせに。
あなたが私をこんな気持ちにさせたくせに。
……いいですよ。ちゃんと言葉にして教えてあげます。

「――『好き』です」

搾り出した私の声は掠れ、震えていた。

「大好きなんです。愛してるんです。私だけの唯先輩になってほしいんです」

そんなの無理だって、わかってますけど。

唯先輩が息を呑んだ。

言ってしまった。
私は、ふぅっと小さく息を吐く。
終わった。守れなかった。
私は、私の大好きな今を、平穏を守ることができなかった。

気がつけば想いがバレていて、拒まれて、強引に唇を奪って、全部を奪おうとして、でも上手くいかなくて、今さらな告白をして。

隠し続けるつもりだった。胸にしまい込んで、決して口に出すつもりはなかった。
いつか唯先輩に大切な人が出来るまで、その近くでその姿を見ていられたら、それでいいと思っていた、いや、自分に言い聞かせてきた。
本音を言えば、実は唯先輩も私のことが好きだった、なんていう最高のエンディングも妄想していたんだけど。
結局、迎えたのは最悪の結末。
お笑い草だ。
まぁ、異常な人間の異常な想いの行く末としては妥当なのかもしれない。
不思議と、後悔はない。きっと私は、この想いに、唯先輩のことを好きになったということにどこか誇らしいものを感じているんだ。
私は、すっと唯先輩の上から体を退ける。
もう、今までの関係でいることは出来ない。いるつもりもない。だって、そんなことをしたら、それは私自身が私の想いを冒涜することになってしまうから。
せめて、私ぐらいは私を受け入れてあげたいし、ね。

だから、これで。

「ごめんなさい」

こんな酷いことをして、ごめんなさい。
好きになって、ごめんなさい。

「それから、今までありがとうございました」

こんな私を後輩として可愛がってくれて、ありがとうございました。
放課後ティータイムのメンバーとして一緒に音楽をしてくれて、ありがとうございました。

「さよなら」

これで、さよなら、だ。
目頭がとんでもなく熱い。必死で耐えないと、今にも涙が零れそうになる。
でも、今泣いたら視界が滲んでしまう。唯先輩の顔をまともに見ることができなくなってしまう。最後ぐらい、笑っていたい。
私は、出来得る限りの笑顔を見せる。もうそれはほとんど泣き笑いになってしまったのだけど。
そろそろ出ていこう。
これ以上ここにいると、またいつ私が暴走するかもわからない。
そう思って、私はベッドの上からゆっくりと体を起こそうとした。




どうしようもなく好きなのに 後編(3)
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Author:松中 竜馬
百合が大好きなしがない人間。
唯梓は至高。
趣味はスポーツ観戦・麻雀・小説書き。

ブログの内容は二次創作百合小説が中心となります。
なので、こう言うのも何ですが、そういうのが苦手な方は見ないことをおすすめします。

ジャンルはけいおん!がメイン 
カップリングは唯梓

感想、ネタ振り、唯梓への想い等、コメントを頂けると非常に嬉しいです。百合好きな方、唯梓好きな方は色々と語り合いましょう!

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