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SS きみにとどけ(1)

2010.05.09 *Sun*
※唯梓
※バレンタイン・唯嫉妬・告白話
※唯視点



『きみにとどけ』

私、平沢唯は今年のバレンタインデイ、初めて本命チョコというものを作ってしまいました。
本命でなくともチョコを自分で作ったことなんてない。でも、今年は何としても作りたい。
だって、大好きなあの子に私の想いを届けたいから。高校生活ももう終わりだもん。動かなきゃ、始まらない。その一心で始めたチョコレート作り。
妹の憂に一から教えてもらっての作業は休日丸一日を使ってしまった。受験勉強なんてそっちのけ。直前だってのに、これでいいのか、受験生。
……いいんだよ、きっと。恋は女の子にとって最優先事項なんです。
私は、大きめのハート型のチョコレートを冷蔵庫に入れて、憂と笑顔で顔を合わせた。
ちなみに、憂も作ってる。何でも、和ちゃんにあげるんだとか。

「うまくいくといいよね、お姉ちゃん!」
「うん!」

私は、心の中でそっと呟く。
『この想いが、あの子に、あずにゃんに届きますように』

   ◇

放課後の音楽室。私はん~と大きく背を伸ばした。はぁ、勉強しんどいよ~…。
私たち三年生はもうとっくに自由登校ということになっていて、学校に来る必要はない。でも、放課後になれば、相変わらず私たちは音楽室に集まるんだ。
特に理由もないのに放課後になったらわざわざ、家から、予備校から学校に来る私たちって、傍から見たら変かもしれない。
でも、それが私たち『放課後ティータイム』なのです。
まぁ、今日の私には学校に来る大きな目的があるわけだけど。家にいてもその『目的』のことを考えると、そわそわして落ち着かないから、思わず学校に来てしまった。
だから、一足お先に音楽室に来てお勉強をしていたというわけだ。
昨日一生懸命作ったチョコが入った通学鞄に目を落とす。はぁ、あずにゃん、よろこんでくれるかな。
あの子のことだから、表向きは素っ気ない態度をとるんだろうな。『せっかく作って頂いたんですし、ありがたく頂いておきます』って感じに。
それでも、きっと顔は真っ赤なんだ。ばればれな照れ隠しの態度を取りながら受け取ってくれるはずだ。そんなあずにゃんの様子がありありと思い描けて思わず顔が綻ぶ。
でも。
でも、私が受け取って欲しいのは、チョコレートだけじゃないんだ。大切なのはチョコレートに込めた、私の想いなんだ。
それを受けとってもらえるかどうかはわかんない。それを伝えなきゃ、受け取ってもらえなきゃ、意味がない。バレンタインデイって届けたい想いを伝える日だから。
だから、『お菓子メーカーの陰謀』だなんて言っちゃ、めっだよ。りっちゃん。
……あ~、ようやく集中出来てきたところだったのに、こんな気分じゃもう勉強は無理かな~。よし、せっかくだし、気分転換の意味を込めてギー太でも――
そう思って私が椅子を立ち上がろうと腰を浮かせたのと、音楽室の扉が開いたのは、ほとんど同時だった。

「――っと、あ、あれ、唯先輩? 何でこんなに早く」

どきんっと心臓が跳ねた。
愛らしい、ツインテールの小柄な女の子。私の軽音部の仲間で、後輩で、そして、想い人。中野梓ちゃん。
ああ、大変だ。昨日からずっとあずにゃんのことばっかり考えてたから、いざこう顔を合わすとなると、何か照れる。すっごい照れる。顔が熱くなってきた。
落ち着け、私。そう、ここは先輩らしくきりっとしなきゃ、きりっと。よし、表情を引き締めて――
ああ、やっぱ無理……。顔が真っ赤になってる気がする。だってこれから、本命チョコを渡すんだよ!? 緊張するに決まってるじゃん! 
う~、ライブの時とかでも緊張したことなんてなかったのにぃ。

「……先輩、何、中腰で百面相してるんですか」
「はっ!? 私、変な人になってた!?」
「大丈夫ですよ、元からですって」
「ひどい!」

意地悪気な笑みを浮かべるあずにゃん。こっちはこんなにも一途にあなたを想っているというのに!
あずにゃんが、まぁ当たり前だけど、いつもと変わらない態度をとってくれたおかげでちょっとは落ち着けた。そうだね、自然体、自然体。
そう思って、軽く息を吐いて、部屋に入ってきたあずにゃんを見た時、それに気がついた。

「え、えっと、あずにゃん。その手に持ってるまるでチョコレートのようなものは何かな?」
「あ、あ~、これは、その、あ、あはは。実はさっき三年生の方に呼び出されて、もらっちゃって」 

……三年生にもらった? あずにゃんが?
私はそれを、あずにゃんが大事そうに手に持っているチョコレートをじっと見る。
作った人の気持ちが見て取れる丁寧で、かわいらしいラッピングの四角い箱。
昨日一日それを作ろうと頑張った私だからこそわかる。
それは、まるで。

「……本命チョコ、みたいだね」
「本命、らしいです」

あっさりと。でも、顔を朱に染めながら、嬉しそうにあずにゃんは言った。

「吃驚しましたよ、朝、下駄箱をみたら手紙が入ってて――」

そっか。そうだよね。今日はバレンタインデイ。届けたい気持ちを届ける日。

「何かと思えば、放課後屋上に来てください、なんて書いてあるんですよ――」

そう、それは当然私だけじゃなくて。みんなにとってもそうなわけで。

「私は知らない方だったんですけどね。何でも、ライブの演奏を聞いてくれてて、それで一目惚れだって――」

ああ、でも。でも。悔しいな。本当は、私が、この子をこんな照れた、かわいい顔にしてみせるつもりだったのに。

「卒業する前に気持ちを伝えておきたかったなんて言われちゃって、って先輩? 話聞いてます?」
「っ! ごめん、聞いてるよ」
「ごめん、聞いてるよって何か矛盾してます」
「あぅ、ごめん……」

ああ、何かヤダ。あずにゃんが嬉しそうなのがヤダ。そんなことを思う自分がもっとヤダ。持ち前のポジティブシンキングも、すっかり弱ってる。

「どうしたんですか?」
「う、ううん、どうもしないよ?」

ヤダから、それは表に出さない。必死で押し隠す。この子は鋭いから、やっぱり変に思われちゃうかもだけど、それでもこの暗い感情は絶対に外に出したくない。なのに。

「そうですか……。あっ、それでですね。先輩はどう思います?」
「へ、何が?」
「だからですね」

次の彼女の一言は、私の心に大きすぎる衝撃を与えた。

「もし、私がその人と付き合うって言ったら、先輩はどう思いますか?」

目の前の少女が何を言っているのか、理解できなかった。理解したくなかった。でも、否応なしに、私の頭は考えを紡ぎ出す。
それは、つまり、そのつもりがある、ってこと? あずにゃんが、私の隣にいなくなるってこと? この想いの行き先が、なくなるってこと?

「あ、もしも、の話ですよ? というか、もうことわ――」
「……だ」
「え?」

ああ、もう、止まんないよ。

「そんなの、絶対にヤダ!!!」

私は鞄を手に取ると、逃げるように音楽室から飛び出してしまった。
 


『きみにとどけ』(2)

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松中 竜馬

Author:松中 竜馬
百合が大好きなしがない人間。
唯梓は至高。
趣味はスポーツ観戦・麻雀・小説書き。

ブログの内容は二次創作百合小説が中心となります。
なので、こう言うのも何ですが、そういうのが苦手な方は見ないことをおすすめします。

ジャンルはけいおん!がメイン 
カップリングは唯梓

感想、ネタ振り、唯梓への想い等、コメントを頂けると非常に嬉しいです。百合好きな方、唯梓好きな方は色々と語り合いましょう!

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